2012年4月13日金曜日

尿中セシウムの測定結果を考える:六号通り診療所所長のブログ:So-netブログ


こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

先日ある方からご質問を頂きました。
(その方の特定を避ける観点から、
実際のご質問内容を、
少し変えて記載することをお断りしておきます)

お子さんの尿の検査で、
1リットル当たり0.08ベクレルの放射性セシウム137が検出されたのだけれど、
その数値の意味合いを、
どう考えれば良いのか分からない、
と言うのです。

尿中のセシウムの測定は、
多くの検査機関で行なわれています。

特に例のチェルノブイリ膀胱炎の話があってからは、
あの元になった文献では、
尿中のセシウムの濃度で、
その汚染の程度を分類しているので、
それと比較しての議論が多く行なわれるようになりました。

ただ、概ねその議論は大雑把で、
あまり建設的なものではありません。

今日は僕なりに、
尿中のセシウム濃度の測定から、
何が分かるのか、
ということを、
なるべく実証的に考えてみたいと思います。

尿中のセシウムの測定値から、
実際に身体にどれだけの量のセシウムが存在しているのか、
推測することが可能でしょうか?

この点については、
僕もより数段賢い方が、
詳細に検討されていますので、
僕が今更何かを言うような必要はないのですが、
かなり複雑な話になっているので、
なるべくプラクティカルに、
単純化して話をしたいと思います。


甲状腺は何をするのでしょうか?

このことを考えるには、
体内に取り込まれたセシウムのうち、
どの程度の部分が尿中に排泄されるのか、
という点を考える必要があります。

セシウムはカリウムと、
体内ではほぼ同一の動態を取ると考えられます。

セシウムは本来は身体に存在する元素ではなく、
それに特化した吸収や排泄の仕組みが、
身体にあるとは考え難いので、
概ねその挙動はカリウムに置換して考えて、
問題はないものと思われます。

ただ、カリウムは細胞壁にあるカリウムチャネルという出入り口や、
カリウムポンプという汲み出し汲み入れのシステムによって、
その調整が図られていますが、
そのチャネルやポンプの出入りの仕方に、
若干の違いの違いがある、
というデータが幾つか存在し、
概ねカリウムより細胞内から細胞外への汲み出しの力は弱い、
という結論になっています。

つまり、カリウムよりセシウムの方が、
細胞内には蓄積し易い、
という所見です。

しかし、現行分かっているデータの範囲では、
その点にも左程大きな違いはないと考えて、
大きな問題はないと思います。

それではまずカリウムの体内の動態から、
考えてみましょう。

こちらをご覧下さい。

この図はカリウムの体内の収支を見たものです。
食事から身体に入ったカリウムは、
体内のカリウムプールに入り、
そこから一部は便に、
一部は汗から、
そして一部は腎臓から尿となって排泄されます。


脳のどの部分が髄質でのコントロールを持っています

ここで、
体内の全体のカリウム量が3500mEqで、
尿からの排泄が35~90mEqですから、
概ね体内のカリウム量の、
1~2.6%程度が、
尿中に出ていることになります。

この比率がセシウムでも同等と仮定すると、
尿中のセシウム量の、
38~100倍程度のセシウムが、
体内には存在する、
ということになります。
勿論これは一定の定常状態に、
達している場合の話です。

これは正しい推定でしょうか?

次をご覧下さい。

これは放射線医学総合研究所のサイトにある、
経口摂取による内部被曝の際の、
セシウム137の尿中排泄割合を見たグラフです。

ある一定量のセシウム137が口から身体に入ると、
その後24時間では、
その100分の1より少し多い量が、
尿から排泄されることが分かります。

これはそのオーダーとしては、
先刻の推測と、
そう違う数値ではないと思えます。

つまり、最初の推測は、
そう外れてはいないのです。

では次をご覧下さい。

こちらは同様に経口摂取の場合の、
便への排泄割合を見たものです。

被曝後24時間の便中排泄は、
尿中の排泄量より、
桁が1つ下であることが分かります。

つまり、意外に便からは排泄されていません。

これも最初のカリウムの動態図を見て頂くと、
尿中排泄の1~2割くらいしか、
便中には排泄されていないことが分かります。


頭の上にtigtnessと痛み

これもこの排泄パターンに、
概ね一致しています。

1つ興味深いことは、
便中の排泄量とほぼ同量が、
汗から排泄されるということです。

上記のセシウムの排泄曲線は、
あくまで1回きりの被曝を受けた想定の元に、
その後の排泄の経過を見たものです。

従って、臨界事故のようなケースでは、
その通りに計算すれば良いのですが、
現状のような低線量の被曝が、
ある程度の期間続いていると想定されるような場合には、
そのままでは活用は出来ません。

それで、持続的に低線量の被曝を受け、
ある種のプラトーの状態に達した場合を想定して、
計算したようなグラフも存在します。

ただ、体内のその時点での放射線量と、
尿中排泄量とは、
ある幅の中に存在していることは確かであり、
それが低線量の被曝である限りは、
持続的でプラトーに達していようが、
一度だけ被曝したものであろうが、
その時の尿中排泄の比率にはそれほどの違いはなく、
もっとラフに考えても、
良いのではないかと僕は思います。

ここで最初のご質問に戻りますと、
仮にそのお子さんの1日の尿量が1リットルとすると、
その時点での体内のセシウム137の総量は、
概ね3~8ベクレル程度ではないか、
というような推測は可能となるのです。

本来1日の排泄量がこうした場合には重要なので、
尿中の放射性物質を測る方は、
出来れば24時間分を全て貯め、
それをよく攪拌して、
その一部を提出することをお勧めします。

スポットの尿の濃度を測定しても、
正直なところあまり意味があるとは思えません。


仮にある時点で非汚染地域に転居し、
食事からのセシウムもゼロにすることとすれば、
その後の経過は上記の排泄曲線通りに、
推移すると考えて良い訳です。

従って、状況が変われば、
経時的に尿中のセシウムを測定することには、
一定の意味はあります。

ただ、今回のような低線量の被曝の影響を、
尿中のセシウムの測定のみから判断することは、
実際には非常に困難で、
大雑把な1つの指標程度に、
考えておいた方が良いのではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。



These are our most popular posts:

薬のQ&A薬や医療の用語

また、1日に3回飲んでいた血圧降下剤が、製薬会社の工夫で1日1回だけ飲めば同じ ように効果が出るようになった事も、小さい ... 医者任せではなく、自分の病気のことは 自分が主治医のつもりで、病気のこと、薬のこと、治療のことなど、十分理解して、どう したら ... また、仕事などの関係で指示通りに飲めない、などの場合は、多少服薬時間が 指示通りでなくても薬を飲むことの方が重要な ... A4, Drug Delivery System(ドラッグ・ デリバリー・システム)の略で、薬物送達システム、薬物配送システムなどと訳されてい ます。 read more

食欲が止まりません。 どうしたらいいでしょうか? 仕事中の間食.. - 人力 ...

仕事中の間食も止まらないし家に帰ってきてからの夜食も止まりません。 ストレスが 原因だ ... どうやったら食べるのを我慢することが出来るのでしょうか? 全部見る ... もちろん食べすぎは太るし体に悪いので、間食と夜食は自分で作ったものしか食べない 。 作るのは、 ...... 関連質問. PHPとMySQLで人気投票のシステムを作りたいのですが、 良いアイデアというか設計がまとまらず悩んでいます。… id:black kenchan ... read more

尿療法を使用して治癒

尿療法状態の理論: 尿中排泄に身体の経験 - 物理的および心理的--収集されます。体 に尿をさせず同じ経験の問題に対処するには、2 番目のインセンティブを与える、2 番目 の時間に直面する、身体の免疫システムを強制します。 ... この期間の後にのみ、細菌 自分の仕事を開始しないでください。しかし、彼らすべて ... どのようにそれそれだけを 排除するかなりの努力を支出している流体に体を復活させる意味をすることができます か? read more

尿中セシウムの測定結果を考える:六号通り診療所所長のブログ:So-net ...

2012年1月20日 ... それと比較しての議論が多く行なわれるようになりました。 ... 実際に身体にどれだけの 量のセシウムが存在しているのか、 推測する ... どの程度の部分が尿中に排泄される のか、 ... カリウムポンプという汲み出し汲み入れのシステムによって、 ... read more

0 件のコメント:

コメントを投稿