腰痛
アメリカの大人たちの間では、もっぱら背中の健康問題が話題のタネ。まっすぐになる姿勢は本来歩行のためのものですが、21世紀の私たちは殆ど座りっぱなしになっているのがその原因。悪い姿勢や無理をする、あるいは物を押したり引いたり持ち上げる姿勢によって、背中の痛みは起こります。そして最も多い痛みは、背骨周囲の一連の筋肉が引っ張られることで起こるものです。
動くことは動かないでいるよりもストレスは少ないかもしれませんが、立つことは背骨を圧迫します。バスタイア大学(Bastyr University)自然療法学部の講師でバスタイア・自然衛生センター(Bastyr Center for Natural Health)のケビン・コンロイ(Kevin Conroy)自然療法医は「それは、我々が二足動物だからだ。直立した姿勢であることは大きな代償を払う。スポンジ状の椎間板でつながれた背骨について考えてみよう。立っている時の圧迫力は互いのてっぺんにかかる。背骨の老化は足で立っていることから起こるが、座る位置、粗末な食生活、脱水によって複雑化する」と述べています。
また、ニューヨーク、サウスホールドの代替療法(Alternative Healthcare)のリサ・カウリー (Lisa Cowly)博士も「現代生活では、車の運転やコンピューターにどっぷりつかることで、腰痛を 抱えこんでいる。さらに、首、上背にかなり力やストレスがかかる。誰もが体の中に、ストレスが かかる場所を持っている」と話します。
きちんとした栄養は諸問題が起こるのを防ぐ、あるいは起こった場合でも体の再生と修復に力をかすカギとなります。
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Back-Aid Nutrients(背中を守る栄養)
体の組織中にあり、またサプリメントとしても入手できる天然物質、グルコサミンサルフェイト(Glucosamine sulfate)は軟骨と滑液の両方を作り上げる物質の主要構成単位の一つです。カウリー博士は「グルコサミンは関節の滑液を潤滑油として維持し、体内でグリコサミノグリカン(GAGs)を作るために使われる」と話します。
こうした物質は軟骨基質の水分を失わせない働きを行います。スポンジのようになって、ショックアブソーバーの役目をする水を保持する。そして、接合組織がさらに弾力性を持つように手助けをします。グルコサミンはまた、骨格と筋肉をくっつけておく組織の修復に積極的な役割を果たします。
コンロイ博士は「大体の腰痛や椎間板ならびに軟骨の変性に対して効果を発揮し、その結合組織を見事なほどに支えている」と意見を述べています。
膝の変形性関節炎患者252人に対するグルコサミンサルフェ� �トの影響を調べた研究では、グルコサミンを使用して1ヶ月で痛みがなくなり可動性に著しい改善が見えたという報告がありました(Osteoarthritis Cartilage 2 1994年)。グルコサミンサルフェイトが変性関節炎による痛みと炎症を抑える効果に関して、アスピリンやアセタミノフェン(NSAIDs)といった非ステロイド系抗炎症剤に比べ、長期的にかなり良い結果を残したことを比較研究で示しました(同)。
天然物質のコンドロイチンもまた、有効性があるものです。カウリー博士は「グルコサミンサルフェイトは基本的に糖分子が結合したアミノ酸。コンドロイチンサルフェイトは、それが多く集まって長い鎖を形成する。2つは相乗作用で一緒に働く」と話しています。
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膝の変性関節炎患者30人以上を調べた研究では、関節の痛みは3ヶ月で鎮静、可動性もかなり改善したことを明らかにしました(Osteoarthritis Cartilage1998年)。
MSM Spells Relief(MSMと書いて緩和剤と読む)
MSM(メチルサルフォニルメタン)は、軟骨基質に含まれる水と結合することで背中を保護します。カウリー博士は「これは有機硫化物質で、食べ物や体の中に見つかる。また、サプリメントでも手に入る。硫黄は溶けやすい栄養素で、水にも簡単に溶ける。関節に栄養を与えることに関しては、グルコサミンと同様の働きを行う」と説明します。
硫黄は結合組織の形成に必要なものです。カウリー博士によると、関節炎患者を調べた研究では、患者以外のグループと比べ、体内の硫黄濃度が3分の1になっていることが分かったということです(Jour Exp Zoo1995年)。
コンロイ医師は「MSMは有望と見ている。結合組織に力をかし、いつでも両極性のある長い鎖を作り上げる。そのことにより、さらにスポンジ化するため、弾力性を持ち水分を含んで保持する」と話しています。
Fat Help(脂肪の助け)
オメガ3脂肪酸として知られる脂肪もまた、体内の炎症を抑えることで背中を保護します。コンロイ医師は「オメガ3が炎症や痛みを抑えることによりアスピリン同様の有効性があることが、幾つかの研究で確認されている。私たちのクリニックに通ってくる患者には殆ど、数種類の必須脂肪酸を与えるか、その栄養素の豊富な食品を食べるよう薦めている」と説明しています。オメガ3脂肪酸を摂取するには、魚オイルそして/あるいはサケやヒラメ、ツナ、メカジキのような冷水魚を食べること、また亜麻種、麻、タラの肝油が配合されているサプリメントを飲むことです。
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コンロイ医師は「アスピリンのような市販のNSAIDSや自然療法製品で炎症を抑えることはできるし、必須脂肪酸や亜鉛、ビタミンB複合、カルシウム、マグネシウムを供給して一連の抗炎症反応を促進することもできる」と述べています。
NSAIDsは痛みや炎症緩和によく使われますが、リーキーガット(腸漏れ)と呼ばれる嫌な症状を引き起こすこともあります。カウリー医師は「たとえ、(痛みが)緩和できたとしても、何らかの長期的障害を起こしてしまうかもしれない。リーキーガット患者では、小腸内膜の状態が良くない。おそらくお粗末な食習慣や毒素からの影響、善玉腸内菌の欠如があると考えられる。その結果、主要栄養素は小腸から漏れ、関節のスペースに泊り込み刺激源を作る」と述べています。
A Holistic Approach(全体論的医学の道)
カイロプラクティック治療は、背中や体全体の自然治癒を助ける最も重要な処置です。カウリー博士は、「背骨を通る神経は全て体の別な場所へ伸びて、別の器官に滋養を与えている。カイロプラクティックは首や背中の痛みを緩和するだけでなく、体組織全体のバランスを取る。さらに、エネルギーのスイッチを入れるもう一つの方法でもある」とも述べます。
カウリー博士のような全体論的カイロプラクターは、エクササイズ、強化トレーニング、ストレス解消法、栄養、ストレッチをその治療プログラムに組み入れています。「自信を持ってエクササイズを薦める。というのは、ともかくいろいろの問題は座りっぱなしの生活から派生すると思うからだ」と説明します。
マッサージもまた、背中の痛みを治療するのに効果的です。トロント大学が無作為、対照グループを用いて行った研究では、総合的マッサージ療法(柔組織手治療、治療的エクササイズと姿勢指導)を腰痛治療における別口のマッサージ療法と比較しました。1ヵ月後、総合的マッサージ療法を受けた患者の5人に3人から、痛みがなくなったという報告がありました(CMAJ2000年6月号)。
Back to Back Basics(基本に戻る)
コンロイ医師は「適切な治療を受けようとするなら、正しい診断をしてもらう必要がある。しかし、どんな治療でもその基本にあるのは水(少なくとも1日に8杯)、質の高い総合ビタミン剤、抗炎症性の必須脂肪酸が豊富な食品を摂ることだ」。特に有機食品がベストだと付け加えています。
カウリー博士も「健康なライフスタイルを指導している。まず、体の中を浄化すること。酒類、乳製品、カフェイン、砂糖、高脂肪の食品などを避け、豆類、果物・野菜、鶏、魚を多く摂り、リーキーガットを治すことを主体にすれば、その違いを感じることができる。筋骨格だけにこだわると、全体像が見えなくなってしまう。これが、全体論的処置である」と説明します。
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